セロリの同情を呼ぶブログ(仮)

生きろ、お豆腐メンタル

部長は乙事主

もののけ姫宮崎駿監督)では、なぜ猪たちが滅びてしまったのだろうか。

現代社会では、なぜたくさんの組織が潰れてしまうのだろうか。

その答えは、私が社会人になってから知った。

 

ある営業組織の話をしよう。以下はほぼ実在の話である。

 

長年業界に君臨し、出世街道を突き進んできた、O部長(仮名)。

顧客は、彼が商談に行けば頷き契約してしまう。部下は、彼の話を聞いていると顧客に赴くだけで売れてしまう気がする。

さながら、数百年もの間、鎮西の猪たちを総べてきた乙事主(おっことぬし)様(注1)のような存在である。ああ、乙事主様。ぶひぶひ。そして我らも猪突猛進の志士となる。

 (注1:宮崎駿監督「もののけ姫」のキャラクターである)

 

ある日、その営業組織に変化が起こった。

外部環境の変化により人員を減らしたため、一人一人の担当領域が広がった。そしてベテラン社員と若手社員を数名交代させ、営業経験値が下がった。

突然人間が現れて森を切り刻んでしまったようなものだから、私たちは動揺した。

 

社員の動揺をよそに、O部長のやり方は変わらなかった。

これまで彼が成功してきたのは、とにかく顧客の元へ足を運び続けたからである。彼は今まで通り訪問件数を重視する方法を選択した。

まわりが変わろうが、乙事主様は古来からの猪の誇りを忘れないのだ。

 

結果、売上は減少。

理由は簡単で、担当領域が広がったため移動時間が増加し、慢性的に時間がない状態に陥ったからである。時間がないことにより、クレーム対応や販売後のアフターケアなど既存顧客へフォローができなくなった。

 

さらに新規顧客を開拓する前に必要な事前準備ができなくなった。もちろん、ただ訪問しても営業経験のない若手は何をして良いかわからない。

既存の守り、新規の攻め、どちらもおろそかになってしまった。

 

でもO部長のいう事に間違いはないはず。だって長年この業界に君臨してきた乙事主様ですもの。ずっとこの組織を守ってきた人ですもの。

私たちは根性で前に進み続けるしかなかった。

 

移動時間にばかり時間が割かれ、売上があがらないばかりか、勤務時間も増大し、社員は疲労困憊してしまった。結果、若手数名がうつ病で休職してしまった。

 

O部長は祟り神になり、社員を飲み込んでしまったのだ。

 

数年前まで1ドル90円台だったのにあっという間に110円台。ついこの間までガラケーだったのに、もう皆スマホ。時代はめまぐるしく変化している。

O部長は、過去の成功体験だけを元に方針を決めてしまった。

乙事主は、猪の誇りだけを元に突進してしまった。

時代の変化に合わせて方向転換する柔軟性、これがないと組織はいとも簡単に潰れてしまうのである。